最近のSonyのカメラは非常に性能が高いのですが、その性能をフルに活かすにはCFexpress Type Aというマイナーな規格に対応したカードを利用しなければなりません。マイナー故に製品の選択肢も少なく泣く泣く高価なものを買わざるを得ないことが、多くのSonyカメラユーザーの悩みのタネになっているのではと思います。
私も同じくこのような悩みを抱えていたのですが、そんなところにPERGEARから相場の半分以下という格安で大容量のCFexpress Type Aカードが発売されました!しばらく前に旅先で容量不足を起こしてしまい、シャッターチャンスを逃してしまった経験もあり、半分衝動買いのようなところでこのカードを購入してしまいました。
本記事では、PERGEAR CFexpress Type Aメモリーカードを購入し、様々な動作テストも行った上で、およそ3週間ほど実際に利用して1万枚、データ量にして数百GBくらいは撮影した感想等をレビューとしてまとめていきます。
なお、本記事ではPERGEAR CFexpress Type Aメモリーカードについてのレビューを行いますが、本カードも含め、2024年8月時点でのおすすめPERGEAR CFexpress Type Aカードを紹介する記事も作成しています。他にも多数あるカードの中からどれが一番良いか、迷われている方はこちらも是非参照ください。
高いCFexpress Type A対応カード
冒頭でも触れたCFexpress Type A対応カードが高いという問題ですが、どれくらい高いかというと、例えば以下のようなSony純正の960GBのモデルは記事執筆時点で12万円もします。
他の高性能カメラで採用されているCFExpress Type Bと比較してみましょう。以下のような製品の場合、執筆時点で約5万円ほどで、かつType Aのカードより書き込み・読み取り速度も高速です。容量あたりの価格は倍以上の開きがあります。
比較対象として高価になりがちなSony純正品を選んでいるということもあり、特に高い製品を選んでいるという事情はありますが、そもそもType Aのカードについては512GB以上の大容量のカードは純正以外の選択肢がこれまで殆どありませんでした。容量を下げて256GB付近の製品の価格を比較しても、競合他社の製品が出てくるため多少マシにはなりますが、やはりType Bのものとは2倍近い価格差が生じています。
「PERGEAR CFexpress Type Aメモリーカード」の価格
CFexpress Type Aカードが非常に高いことがわかったところで、PERGEAR製カードの価格を見てみましょう。このカードは執筆時点での価格が7万4千円ほどで、この時点でも純正のカードよりも圧倒的に安いです。
更に、私はこの価格からセールで割引が行われているタイミングで購入し、カードリーダーとセットの製品を5万8千円と驚くほど安値で購入しました!先程挙げた競合になる製品の価格が12万円もすることを考えると激安です。
CFExpress Type Aでは珍しい大容量カードな上定価の時点でかなり安いので、この性能のカードをほしいと考えているのであれば割引のタイミングを待つ必要性はあまり無いですが、更に安く買いたい場合は狙ってみるのもアリでしょう。
「PERGEAR CFexpress Type Aメモリーカード」の性能
公称されている性能を表にまとめてみました。
PERGEAR CFexpress Type Aメモリーカード | |
容量 | 1TB |
書き込み速度(最大) | 700MB/s |
読み込み速度(最大) | 800MB/s |
保証期間 | 5年 |
価格(2023/11/24 Amazon調べ) | 73,999円 |
書き込み、読み込み速度は製品紹介ページのテキストで表現されているものを採用していますが、画像の方には最大書き込み速度が786MB/s、最大読み込み速度が822MB/s、最小書き込み速度が722MB/sと表現されていて、実測値は一回り大きな速度が出るそうです。特に、最小書き込み速度が700MB/sも出ることが重要なポイントです。安いカードは連写し続けるなどして長時間書き込みを行っていると段々と速度が遅くなり、バッファ溢れに繋がってしまいます。PERGEARの512GB以下のカードもそのようで、最小書き込み速度は400MB/sとのことでした。一方で、本製品の場合は最小書き込み速度は十分に早く、最大書き込み速度との差が小さいです。このため、このカードであれば長時間連写を行ってもバッファが溢れにくいと考えられます。
公称されていない部分の性能について
こういった製品の公称されている性能には現れない重要なポイントとして、耐久性が上げられます。少し専門的な話になりますが、カードを構成する技術としてSLCとMLCという技術があります。これはデータをどのように保存するか?という所に関わる技術で、MLCよりもSLCの方が耐久性があるがコストが高いとされています。例としてPERGEAR製のカードと比較してより高価なProGrade DigitalのCOBALTシリーズのType AカードはSLCが採用されていることが明言されています。
PERGEAR製のカードがSLCかMLCかのどちらを採用されているかは明言されていませんが、安いなりにこうした耐久性のような部分に妥協がある可能性は考慮しておいたほうが良いでしょう。一方で、容量が大きいほど耐久性が向上する側面もありますし、この製品は保証期間が5年と他社比較でも長めに設定されていることもあり、ある程度自信があることも見受けられます。こうしたところから、耐久性に難アリな可能性を考慮しつつも購入した部分はあります。
開封
写真を交えて開封時のパッケージ等を紹介します。
パッケージはこんな感じです。製品情報が記載されているオーソドックスなデザインで特筆して語ることはないかなと思います。
なお、冒頭でも触れてますが私はCFExpress Type Aのリーダーを持っていなかったので、リーダーをセットで購入しております。
パッケージを開けるとこんな感じで、無駄に大きなパッケージの中央にカードが鎮座しています。
カードを取り出してみました。せっかくなので現在利用しているProGradeのカードと並べてみます。比較してみるとPERGEARのカードはProGradeと比較して全体がプラスチックに覆われていることがわかります。ProGradeのカードは放熱を意識して金属で覆われてる部分が多く、読み書きした後には表面がかなり熱くなります。PERGEARのカードはぱっと見では放熱に不利な作りをしているように見えます。
テスト
PCを利用して外部ストレージとして本カードを接続した際の性能を測定してみます。カードリーダーには一緒に購入したPERGEAR製のものを利用しています。
まずは定番のCrystalDiskMarkを利用して性能を測定してみました。結果は以下の画像の通りです。
概ね公称されている性能が発揮できていることが確認できました。商品の説明に嘘偽りは無いようです。
この結果が実際のカメラの使用感にどの程度反映されるかが気になったので、同様にして現在利用しているProGrade製のカードの性能も測定してみました。結果は以下の通りです。
PERGEAR製のカードのほうが一回りほど高い性能が出ていることがわかります。少なくともProGrade製のカードを利用中にバッファ溢れ等の問題に遭遇したことはあまり無かったので、PERGEAR製のカードに切り替えてもこれまでと変わらず快適な撮影を楽しめそうです。
価格が相場より非常に安かったので、念のためH2testwを利用して容量偽装が行われていないかテストしてみました。
問題なくパスできたため、容量偽装も行われていないようでした!安心して利用できそうですね!
Amazon等にもそういった製品が多く存在しますが、相場よりも非常に安価なストレージ製品は容量偽装が行われている可能性があります。PCやカメラからは商品情報通りの容量が存在するように見えるものの、実際にはその通りの容量は存在せず、本来の容量以上のデータを書き込むとデータが消えてしまうという恐ろしい品物です。怪しげな商品を手にした際にはH2testwなどのツールを用いてテストを行うことをオススメします。
実際の撮影を想定して、カメラにセットした場合に何秒間連写を持続できるかのテストも実施してみました。設定等は以下のような環境でテストしてます。概ね普段の撮影で利用している設定をベースとして、動きものを狙う際の10コマ秒連写を行う場合を想定したものになっています。
- カメラ
- a7R V
- 利用したカード
- スロット1: PERGEAR製カード
- スロット2: ProGrade製カード
- カメラの設定
- ファイル形式
- スロット1: 圧縮RAW
- スロット2: HEIF, X.FINE
- ドライブモード
- 連写Hi+
- シャッター
- メカシャッター
- ファイル形式
この状態で連写を試してみたところ、56秒間もの間連写が持続し、その後は8秒ほどでバッファが完全に開放されました。バッファがいっぱいになった時点で65枚程度溜まっていたので、一秒あたりにおよそ8枚程度を捌けるようでした。連写は10秒も続けば十分と判断しているので、カメラでの利用においても実用に適した満足できる性能が出せていることがわかりました!
以下はこの連写テストの様子を撮影した動画になります。メカシャッターの寿命を消耗してテストを行っています。
実際に利用してみて
11月の頭にこの製品を入手し、3週間ほど利用してみました。利用シーンを以下に列挙します。
- 街中での風景撮影
- 水族館
- 野鳥撮影
- 航空祭
風景撮影や水族館はともかくとして、野鳥の撮影や航空祭では連射速度が求められます。特に航空祭では容赦なく連写を続けていると容易に容量いっぱいになってしまいます。
実際にこうしたシーンで利用した感想ですが、不便な点は全く無く、満足に撮影を行うことができました!航空祭では長時間の連写を行う事もありますが、そのような際にもバッファが詰まるようなことはありませんでした。過去には飛行する戦闘機を一心に追っていると容量不足に悩まされることもありましたが、流石に1TBもの容量があるとそのような問題も起こりませんでした。容量を気にせず連写し続けられるのでとても快適でした。
また、水族館ではイルカショーにて動画も試してみたのですが、10分以上連続で撮影しても問題等は特にありませんでした。動画の設定は200M 4:2:2 10bit, XAVC HS 4K, 60p
としており、8K24pの撮影で選択できる400Mbpsの設定よりは要求される書き込み速度は緩いですが、この設定が利用できれば個人的には満足です。そのうち8Kでの利用についても試す機会があれば追記したいと思います。一応ここまでの性能検証の結果を見た感じでは400Mbpsの持続書き込み速度を要求される用途でも問題なく扱えそうだとは思います。
—2024/1/14追記—
後日400Mbpsの書き込み速度が求められる8k24pの設定での動画撮影を試してみました。1分ほど連続で撮影してみましたが私の環境では問題無く撮影することが出来ました。400Mbpsの書き込み性能が求められる動画撮影にも使っていけることが分かりました。
—追記ここまで—
以上の様々なシーンにて合計すると10時間以上はカメラを使い続けていたと思いますが、動作が不安定になることもなく、常に安定していました。この点においては他の製品を利用した際と大差ありませんでした。
最後に撮影したデータを確認してみました。ここまでうまく動いているように見えても、実際はうまく写真が保存できていない等の問題があれば本末転倒です。撮影した数百GBのデータをPCに転送しデータを一通り確認しましたが、特段書き込みに失敗したような不正なデータは見つからず、全てのデータが保存されていることがわかりました。この点においても問題なさそうです。
実際の利用においても想定していた通りの動作を実現でき、大変満足でした!短期的に触ってわかる点においてこのカードに問題点は全く見つけられませんでした。前述した通り、耐久性の面において問題があるかもしれないですが、少なくともそれがわかるのはもう少し先になりそうです。もしこの点で何かしら問題が見つかればこれもまた追記します。
なお、本筋ではないですが一応触れておくと、セットで購入したカードリーダーも不満なく利用できています。カードのテストでも利用している通り十分な速度が出ていることがわかります。こちらも競合製品比較で相当安いので、CFExpress Type Aのリーダーを持っていない方にはこちらもオススメです。
終わりに
あまり良く考えず価格で飛びついたところはありますが、実際に使ってみると十分な性能で大変満足できる製品でした!CFExpress Type Aカードの価格の高さに辟易しているSonyユーザーの方々にオススメできます。ぜひこのカードを購入してみてSonyのカメラの性能をフルに発揮できる高性能カードを安く手に入れてみましょう!現時点では長期間の利用に耐えうるかの判断は出来ないのですが、この点を許せる人には最高の選択肢になってくれるでしょう。
安心の国内メーカーからも安価で大容量なCFexpress Type A対応カードが発売されました(2024/04/14追記)
本記事で色々と動作をテストしているとは言え、やはり大事な写真を保存するデバイスですから、信頼できる国内メーカーのものを使いたいという方は多いと思います。本記事執筆時点ではお求めやすい価格で性能も十分なCFexpress Type A対応カードはPERGEARの製品しか存在しなかったのですが、その後Nextorageという国内企業から同様のコンセプトの製品が発売されました!Nextorageと言うとあのSONYから独立したストレージ開発を主とする企業で、PERGEARよりは信頼しやすいのではないでしょうか?
最新の価格情報は上記リンクから参照いただきたいですが、執筆時点ではNextorage製のカードのほうがPERGEAR製カードよりさらに一回りほど安く、ただ安心できる以上におサイフにも優しいです。さらにお金に余裕があるのであれば、2TBという更に上の容量のカードまで選択することができます。その場合でも執筆時では10万円を切る価格に設定されているため、容量あたりのコスパが非常に高いです。
公表されている書き込み・読み込み性能は共に必要十分で写真を撮る場合には不自由しなさそうです。一方で動画についてはVPG200となっているため、4:2:2での4k120pや8k撮影のような極端な持続書き込み速度が要求されるような設定には使えないかもしれません。私のテストではPERGEAR製カードでは400Mbpsの書き込み速度が必要な動画撮影も行えたため、この点ではPERGEAR製カードの方が優れている可能性はあるかもしれません。しかし、こればかりは実際に購入してテストしてみないことにはなんともです。
Nextorage製のカードは動画性能でPERGEAR製のカードに劣る可能性こそありそうですが、公表されている性能は写真撮影に必要十分ですし、その上安く、信頼ある国内メーカーによって作られています。今のところ既に購入したPERGEAR製カードで満足に動作していますし不満もないので買い替えはしませんが、もしこれから買うのであれば私であればNextorageのものを選びます。そのくらいにはオススメできそうなカードでしたので、ぜひこちらもカード選びの選択に加えてみてはいかがでしょうか?
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